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2006.08.24

鮒寿司のこと

醗酵の話を書き始め快調に数日を送ったものの、お盆明けからあっという間に忙しくなり更新が滞ってしまった。そのお盆明けの数日間、昼下がりから晩の時間を、四日間、彦根で過ごした。彦根で過ごす時間の間も、始めたばかりの醗酵ネタのことがどうしても気になる。だとすれば、彦根で探すべきものは一つしかないだろう。そう、鮒鮓である。

最高の老舗を教えてくれそうな人もおらず、駅前のスーパーで売っているものを買うのも何となく気が引けた。最初はうまいものを食べるべきだとはいつも自分が人に偉そうにいっていることだからである。じつは僕は鮒鮓を食べたことがなく、世間の人が鮒鮓に浴びせかける罵詈雑言のことを考えると、さすがに僕も「はずれ」を引いたら好きになれないのではないかという心配もあった。そんな話をI師匠にすると、I師匠、くだんの駅前のスーパーに鮒鮓を卸していたのはI師匠の知り合いだという。昔の話だし、そこの鮒鮓を食べたわけではないし、と断りながら、I氏はそのご友人が用意してくれた料理のことを美味しそうに話してくれる。ならば話は早いではないか。早速翌日駅前のスーパーで鮒鮓を求めた。

P1040091スーパーとはいえ、鮒鮓が四種も用意されているのはさすがは湖国の都、彦根ならではである。一尾丸ごとのものが子持ちとそうでないものの二種、スライスされているものが大、小二種。いささか自信がなかった僕は、一番安い、スライスの小を買った。プラスチックの容器に薄切りの鮒鮓が放射状に盛られ、真空包装の上からさらにラップをかけてある。そんなにくさいのだろうかと思いきや、真空包装をあけてもそれほどのにおいはしない。よくいわれるように酸っぱいにおいはしているが、これを「くさい」と思う人間からは一生醗酵食品を食べる権利を剥奪してもよかろうと思うぐらいのマイルドなにおいである。塩分により水分を奪われ発酵の過程でかろうじて球形を保った米粒は、ぼろっと崩れ水分の少ないチーズを思わせるが、果たして味もそうである。これまで僕が食べた醗酵食品の中でいうならば、ペコリーノ・ロマーノに一番近いのではないか。身の方もいただくとこれがまた旨い。旨味が凝縮されている、と感じてしまうのは水分が少ない保存食品に共通の特徴なだけであって、本当は長い醗酵の過程をつうじタンパク質が分解され旨味になっているのだとつくづく実感する味である。魚と肉の違いはもちろん感じるけれど、干し肉になる寸前まで水分を搾り取られたハムの旨味に近いものがある。皮に、あるいは身に、というのではなく、そこはかとなく魚のにおいは感じるが、けっして川魚がよくいわれるような泥臭さではけっしてない(そもそも川魚のすべてがどろくさいわけではない)。子よりもむしろ身の方が旨味は強く、通は子持ちを選ばないというのも何となくだがわかるような気がする。酒が進むのはもちろんだが、通はこの鮒鮓の飯でお茶漬けをするのだと聞いた。さぞかし美味しいスープになることだろう。

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コメント

わたしも初めていただいた鮒鮓が田舎のお手製のものだったせいか、鮒鮓にまつわるわるいうわさが信じられないです。
確かに、塩分はちょっときつかったですが臭いとは思いませんでした。わたしがいただいたのはねっとりした感じでしたが、本当にチーズのような旨味の塊でうっとりでした。
さすがに、自分で作るのはおそろしいですが。

投稿: 犬 | 2006.08.25 21:12

犬さん、お帰りなさい、でしょうか。
ほんと、うっとり、ですよね。
やっぱりああいうものは大量に思いっきり重しを乗せて作らないといけないようで、自分で食べる分だけ、というのはどうも無理そうです。そのかわり、というわけではないのですが、先日の乾燥納豆に続きプチ醗酵食品を作っているので(乾燥納豆は醗酵させたわけでなくすでに醗酵しているもの乾燥させただけですが)、できたらまた報告します。

投稿: manavic | 2006.08.26 02:55

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