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2005.06.17

「継時変化」の話:麺屋○竹【竹屋町高倉東入る北側】

この間酢が最初から入っているラーメンの話を書いたとき、ラーメンの「継時変化」の話にちょっとだけ触れた。以前人前で話をしたらおおいに笑われたので(笑)、ネタとしてはどうかとも思うのだけど、ちょっとだけ書いてみる。

僕がいうラーメンの「継時変化」とはこういうものだ。例えばワインを一本飲むとする。ワインは栓を開けてからずーっと同じ味がしているわけではない。時間とともに味が変わっていく。だんだん不味くなっていくだけならただの「劣化」だが、いいワインだと(必ずしも高い、あるいは高級なワインという意味ではない)徐々に果実味などが出はじめてより美味しくなる。これをワインが「開く」という。澱を取りのぞくためにワインをデキャンタにうつす「デキャンタージュ」は、いわゆる「固い」ワインを空気に触れさせ「開かせる」ための操作でもある。これに似たような「継時変化」がラーメンにもあるのではないかと思うのだ。

抜栓後のワインの継時変化は、コルクにより密閉されていたボトルの中のワインが空気と触れることにより、ワイン自体が化学的に変化するためだとされる。もちろんラーメンの場合、大きな寸胴に入れられていたスープが小さなどんぶりに移されたとたん化学変化をはじめる、なんてことはないわけだが、変化が起こるチャンスがないわけでももちろんない。

例えば多くのお店では、寸胴の中のスープといわゆる元ダレとをどんぶりの中であわせてラーメンのスープとするが、この両者は最初から完全に混ざり合っているわけではないだろう。寸胴からのスープの方は脂分も多く含むし、よく乳化したスープであればなおさら混ざりあいにくいはずだ。さらに麺の入った状態で僕たちがスープをちょっとやそっとかき混ぜようとしたところで、麺がじゃまになってそう簡単には混ざらないだろう。食べすすめるにつれ、あるいはどんぶりの中の麺の量が減るにつれ、元ダレの味がどんぶり全体に広がっていくのではないだろうか(そう考えると、食べ終わるころになって醤油味や塩味が強く感じられるラーメンがあることにも納得がいく)。継時変化の原因はこれだけではない。叉焼をはじめとした副材料もそれ自体の味をもっている。これがもつ味が溶けだしスープに広がるということだってあるはずだ。吉田屋さんのときにも書いたが、海苔をスープの中に入れっぱなしにしておくとその味がスープについてしまうことだってあるのだから。

変化するのはスープだけではない。こっちの方がもっとあたりまえのことかもしれないが、麺はスープを吸う。食べ出して一口、二口のころは、麺とスープとのからみがイマイチ、と思ったラーメンでも、食べすすめるほどに麺がスープを含み両者が馴染む、ということはよくあることだ(とくに京都四天王系ではそれも魅力の一つ)。麺の継時変化というと「のびる」という悪い面ばかりが頭に浮かぶが、麺がスープを吸ってこそ楽しめる変化もあるのだ。

もちろんこれらは意図されたことではないかもしれないが、「徐々に広がる旨味」を出すことを意図されたアイテムもある。例えば今日の麺屋○竹さんの「中華そば」に入れられた素揚げの葱がそれである(素揚げの葱の話も今週二回目、か…)。意図されてはいなかった要因や、このようなアイテムによって、一杯のラーメンが徐々に「開き」、食べ終わるころにようやく旨味が頂点に達する、ということもあるのである。食べすすめるにつれだんだんしんどくなってくるラーメンだってあることを考えれば、これはとってもすごいことじゃないか? 少なくとも僕はそう信じているし、そういうラーメンが大好きだ。一つだけ例を挙げるならば岡崎の「一番星」【丸太町白川西入る】。最初は頼りないのだが、中盤からどんどん旨味が出てくる。食べ終わるときには、あーもぅ!、今が一番美味しいのに!、と悲しくなるようなラーメンだ。

で、麺屋○竹。リニューアルしたということでいってみたのだが、前も美味しかったがそれがさらに美味しくなっていた。粗挽き胡椒が少しだけ振られていたり、先述の素揚げの葱がスープに入っていたり、前からされている工夫が以前よりぜんぜん生きていると感じた。スープも以前は鰹がやや目だっている印象をもったが、今回は非常にバランスのよいスープだと思った。巻きバラの炙り叉焼にしても、以前は焦げた部分が気になったが、今は炙ったことで例えば脂がとろとろになっていたりするのを素直に旨いと感じることができる。こういうのを、完成度が高まった、というのだろうか。

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